化学魔の還元

酸塩基編11.中和の量的関係(後半は工事中)


8章で挙げた例を見ていきましょう。

塩酸と水酸化ナトリウムの反応は、次のように表されます。

HCl+NaOH→NaCl+H2
詳しく見ていくと、塩酸と水酸化ナトリウムはいずれも1価の酸、1価の塩基です。
ですから、1molの塩酸からは1molのH+、と1molの水酸化ナトリウムからは1molのOH-が放出されます。
そのため、等モル加えれば中和が完了しますね。

また硝酸と水酸化カルシウムが反応すると、次のようになります。
2HNO3+Ca(OH)2→Ca(NO3)2+2H2
詳しく見ていくと、硝酸と水酸化カルシウムは1価の酸、2価の塩基です。
ですから、1molの硝酸からは1molのH+、と1molの水酸化カルシウムからは2molのOH-が放出されます。
そのため、水酸化カルシウムの2倍の硝酸を加えれば中和が完了しますね。

二酸化炭素(炭酸)と水酸化ナトリウムではどうでしょうか。
2CO3+2NaOH → Na2CO3+2H2
詳しく見ていくと、炭酸と水酸化ナトリウムは2価の酸、1価の塩基です。
ですから、1molの炭酸からは2molのH+、と1molの水酸化ナトリウムからは1molのOH-が放出されます。
そのため、炭酸の2倍の水酸化ナトリウムを加えれば中和が完了しますね。
このとき炭酸は弱酸ですが、それとは関係なく中和は成立します。


このように酸が放出できるH+の物質量と、塩基が受け取ることの出来るH+の物質量(もしくは塩基が放出できるOH-の物質量)とが等しくなる時、中和が完了します。
つぎの章から具体的な問題を考えてみますが、どうやら量的関係そのものではなく濃度やモルの扱いでつまづきやすいようです。そのような点についても注意して問題にあたってください。



中和の量的関係

過不足なく中和が起きた時、次の関係が成り立つ。
(酸が放出できるH+の物質量) = (塩基が放出できるOH-の物質量)
または
(酸が放出できるH+の物質量) = (塩基が受け取れるH+の物質量)

注意:酸や塩基の強弱、電離度は関係しない。





具体的な計算に入っていく前に、酸や塩基の強弱、電離度に関係なく量的関係が成り立つ理由を考えてみましょう。

たとえば酢酸と水酸化ナトリウムについて考えてみます。
水酸化ナトリウムは(普通の濃度範囲なら)ほぼ完全に溶解し、電離度はα=1とみなせます。
対して酢酸は、完全に溶解はするんですが電離度α=0.01くらいです。
このままでは酢酸1molに対して水酸化ナトリウム0.01molくらいで中和が完了しそうですが、実際には水素イオンが消費されると電離がすすんでまた水素イオンが放出されます。
つまり消費されたらその分だけ補充されるので、酢酸は最終的にすべての水素イオンを放出し、中和が完了します。


もちろん比率は1:1です。