化学魔の還元

電池電解編8.水溶液の電気分解

まずは反応式を正しく書けるようになることです。

酸化還元の優先順位

具体的に水溶液の電気分解を見ていく前に、電気分解によって水溶液の外へ追い出される順番を見ておきます。


酸化還元の優先順位

基本的にはイオン化傾向の小さい順に発生・析出する


陰極(電子をもらう側)の場合
  • 水溶液にAg+、Cu2+が含まれている場合、最初に析出する。
  • 含まれていない場合、H2が発生する。
  • Alよりイオン化傾向の大きい金属は絶対に析出しない。
陽極(電子を抜かれる側)の場合
  • 電極がAgやCuの場合は、電極の溶解が起こる。
  •   
      
  • そうでない時(白金電極・炭素電極など)の時は、次の陰イオンのイオン化傾向に従う。
NO3-・SO42-・OH-(H2O)・Cl-・Br-・I-
「昇竜の水は遠州洋にあり」と覚える。イオン化傾向の小さい順に発生。



  • OH-(H2O)が電解すると酸素O2が発生する。
  • NO3-・SO42-は決して電解されない。




参考、金属イオンのイオン化傾向

K・Ca・Na・Mg・Al・Zn・Fe・Ni・Sn・Pb・(H2)・Cu・Hg・Ag・Pt・Au






電気分解の具体例(塩化銅水溶液の電解)

ここでは塩化銅水溶液の電気分解を例にして、電気分解の式を書く手順を紹介したいと思います。

1、イオン・極板確認

水溶液中のイオンをすべて書き出し、極板を確認します。
陽イオン: Cu2+ +
陰イオン: Cl- OH-

あまり意識する必要は無いのですが、H+とOH-を忘れないようにしましょう。
また並べる順番はイオン化傾向を意識して弱い順(強い順)に並べることをお勧めします。理由は章が進んでいくと分かると思います。
次に極板は
陽極板:白金、陰極板:白金
を用いることにします。(このほかに炭素棒を用いることもあります。)ここでは極板に余計な反応をされたら困るので、イオン化しにくい金属を用います。

2、生成物確認

次に析出、発生する物質を考えます。
前の章でも書きましたが、水溶液に電圧をかけると、電極にイオンが集まってきますね。
denkai2.gif(3682 byte)
もう一度書きます。
陽極はプラスに帯電しているから陰イオンが集まり、陰極はマイナスに帯電しているので陽イオンが集まります。
このことはとても重要です。

この集まったイオンと電極の間で、電子のやり取りが行われ、先ほど書いたように、イオン化傾向の小さい順に追い出されます。
水溶液での反応では、追い出されたイオンは単体になります。ですから、陰極ではCu2+が反応してCuが析出し、陽極ではCl-が反応してCl2が発生します。Cuが析出すると、白金板の表面は単体の銅に覆われてしまいます。このように表面を金属で覆うことメッキといいます。
ます。


3、半反応式

そして各極板でのイオン反応式(半反応式)を書きましょう。
あとは出入りする電子の数を合わせるのですが、陽極は電子を抜かれるので電子は右辺、陰極は電子をもらうので電子は左辺です。
これらを踏まえると
陽極:2Cl-→Cl2+2e-
陰極:Cu2++2e-→Cu
このような半反応式が書けます。

4、全体の反応式

それでは全体の反応式を書きあげましょう。
やり方は簡単で、半反応式から電子e-が消えるように調整して足すだけです。この場合は
2Cl-+Cu2+―→Cl2+Cu
これで完了です。
2e-は消えてしまいましたが、これが電気分解の計算問題で重要な部分になってきます。必ずどこかにメモしておきましょう。