化学魔の還元

電池電解編4.鉛蓄電池

現代でも車のバッテリーなどに用いられています

鉛蓄電池の特徴

1859年、フランスのプランテが発明した電池で、現在でも車のバッテリーや非常用電源などに用いられています。現代でも使用に堪える鉛蓄電池の一番のポイントは、充電可能ということです。

鉛蓄電池は負極に鉛(灰色)、正極に酸化鉛(W)(褐色)、電解液に約30%希硫酸(密度約1.25g/cm3)を使っていて、構成は次のように表されます。

(−)Pb|H2SO4aq|PbO2(+)
起電力は2.1Vです。これでは電圧が足りないので、車のバッテリーの電池は、6枚つなげて約12Vまで上げています。

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鉛と酸化鉛(W)のどちらが負極でどちらが正極か、混乱しやすいところです。イオン化傾向による判断は難しいので、酸化還元反応としての見方で考えていきます。ここは1章に戻って考えましょう。鉛の酸化数はもちろん0、酸化鉛(W)の中の鉛の酸化数は+Wです。ということは、この2つの物質の間で酸化還元反応が起きた場合、どちらが酸化剤でどちらが還元剤になるでしょうか?
下図の関係はキッチリと理解してくださいね。

 ⇔ (自分の酸化数低→高、相手の酸化数高→低) ⇔ 還元剤 ⇔電子渡す⇔ 負極
酸化鉛(W)⇔(自分の酸化数高→低、相手の酸化数低→高)⇔酸化剤 ⇔電子貰う⇔ 正極

では順に反応を見ていきましょう。
負極では、上の表で見たとおり、酸化されてPb2+になります。しかし液中のSO42-とすぐに結合して、硫酸鉛(U)PbSO4となって極板に付着します。

Pb+SO42-→PbSO4+2e  酸化反応

すると正極では、電子をもらって酸化鉛(W)が還元されます。このとき、負極と同じく硫酸鉛(U)PbSO4となって極板に付着します。
PbO2+4H++SO42-+2e→PbSO4+2H2O  還元反応

鉛蓄電池全体では、このような反応が行われています。
負極 :Pb+SO42- → PbSO4+2e
   正極 :PbO2+4H++SO42-+2e → PbSO4+2H2
 全体 :Pb+PbO2+2H2SO4 ⇔ 2PbSO4+2H2

二次電池とは?

二次電池とは、充電により繰り返し使える電池のことです。俗に言う充電池というやつですね。
対して、充電できない使い捨ての電池一次電池といいます。

鉛蓄電池は、別の外部電池と同極どうしをつないで電流を流すと、放電とは逆の反応がおきて、負極のPbSO4は還元されてPbに、正極ではPbO2になって、希硫酸の濃度も回復し、起電力がもとに戻ります。
このような操作を、鉛蓄電池の充電といいます。

充電の反応式
2PbSO4+2H2O → Pb+PbO2+2H2SO4

このように鉛蓄電池は充電が可能です。

二次電池と一次電池の違いはなんでしょうか?
鉛蓄電池では、放電するとPbSO4が生成して極板に付着します。このPbSO4は水に溶けないため放電中は放電の邪魔をするのですが、だからこそ二次電池として使用ができるのです。
もしPbSO4が水に溶けたら、充電しようとしてもイオン化傾向がPb>Hのために水素が発生するだけで充電されません。逆反応を起こすためには、反応生成物は水に不溶でなければなりません。

希硫酸を電解液に使っているのに水素が発生しないのは?

正極板が還元されるとき、PbO2のO原子がHと結合してH2Oとして生成されるためです。つまり正極板そのものが減極剤としてはたらいています。
また充電時に、H2Oの一部が電気分解されてO2とH2が発生することもあるので、製品では負極板(Pb)を加工して正極で発生したO2を導き、水溶液中のH+と反応させて水にしています。