化学魔の還元

電池電解編1.電池とは

電子のやり取り=酸化還元反応をうまく使えば「電流」が取り出せます。

電池の基本原理

電池とは 化学エネルギー電気エネルギー変換する装置である、ということが出来ます。普通は2つの物質におけるイオン化エネルギーの差を利用します。

酸性水溶液にH2よりイオン化傾向の高い金属をいれると、その金属は溶けて水素が発生します。
たとえば亜鉛Znを希硫酸に入れると、亜鉛は溶けて水素が発生します。

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この反応は次の化学反応式で表すことができます。
Zn+H2SO4→ZnSO4+H2
でももっと細かく見てみると、実はこの反応の本質は次のイオン反応式
Zn→Zn2++2e-(亜鉛が酸化されている)
2H++2e-→H2(水素イオンが還元されている)
で表すことができる酸化還元反応です。
このとき、ここでは亜鉛と水素イオンの間で電子e-のやり取りがあります。もし何もしなければ、このやり取りに伴って余分なエネルギーが熱として放出されますが、熱エネルギーは回収しにくいし仕事をさせるのも難しいんです。
普通の酸化還元反応
しかしこの酸化還元反応の「酸化」と「還元」を離れたところで別々にやらせ、その間を導線でつないで電子の流れをつくることで、導線部分から電気エネルギーを拾うことができるんです。
電池の原理
このようにして電流を取り出すことを電池の放電といいます。
これが電池の基本原理です。

イオン化傾向と極板の関係


酸の溶液に金属Aと金属Bを入れて、導線でつないでみます。イオン化傾向はA>Bとなっています。
どちらも金属ですから、酸液に入れるとイオン化しようとします。しかしイオン化傾向の差によってAが競争に勝って、Aは自由にイオン化しますが、Bはイオン化が抑制されます。

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Aは自由にイオン化します。A板が溶けてイオンになると、Aイオンは電解液中に溶け込みます。すると極板には電子がたまるので、電子過剰となって電位が低くなります。ですからA板は負極になります。

反対に、イオン化傾向の小さい方のBはイオン化が抑制されます。もし溶液中にBの陽イオンが多く存在すれば、イオン状態よりむしろ単体のほうが安定なので、電子を奪って単体として析出します。すると電子不足となって電位が高くなります。ですからB板は正極になります。

イオン化傾向⇒ イオン化して陽イオンだけが電解液に逃げる ⇔ 電子過剰 ⇔ 負極
イオン化傾向⇒ 陽イオンが電子を奪って単体として析出する ⇔ 電子不足 ⇔ 正極

ここで電池から電流を取り出す前の電流0の状態における、両極間の電位差電池の起電力といいます。
両極を導線でむすぶと、電位差を解消するようにA→Bへ電子e-が流れます。

極板と反応の関係

すると正極・負極とは何かというと、電子の流れを作るために「酸化反応」と「還元反応」が別々に行われている場所だということができます。正極負極とそこで起きている反応との対応は必ずつかんでください。
まずは、正極と負極の定義を書きます。

負極電子を出す極
正極電子を貰う極

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電子の流れと電流の向きは逆です。ここに注意してよく見てください。ここで問題にしているのは電子の流れです。
ここで、酸化還元反応のところで学んだ「半反応式」を思い出してください。教科書を開いてもいいですし、書ける人は有名な式をひとつずつ書いてもいいでしょう。

まず負極の方から考えてみます。負極は導線に電子を出すほうですね。さて、電子が出ているほう、つまり右辺に電子があるほうは酸化剤・還元剤のどちらでしょうか?これは還元剤になりますね。負極には還元剤がくるんです。
すると還元剤の立場に立ってみると、電子を抜かれるので酸化されていますね。つまり負極では酸化反応が起こっています。

今度は正極の方を考えて見ます。正極は導線から電子をもらうほうですね。電子をもらうほう、つまり左辺に電子があるほうは酸化剤です。ということは正極には酸化剤がくるんですね。すると酸化剤の立場に立ってみると、電子を奪ってくるので還元されています。つまり正極では還元反応が起こっています。

まとめ

これをまとめてみます。

負極⇔電子を渡す⇔還元剤⇔(自分の酸化数低→高、相手の酸化数高→低)⇔極板で酸化反応
正極⇔電子を貰う⇔酸化剤⇔(自分の酸化数高→低、相手の酸化数低→高)⇔極板で還元反応


この2つのことは、電池の反応を考える上で最も重要なことです。
ややこしいですが、正極と負極で起こっていることを正確に把握してください。


また、電気エネルギーを得るために実際に反応した物質活物質といい、負極に用いられる物質(還元剤)を負極活物質、正極に用いられる物質(酸化剤)を正極活物質といいます。
この用語は教科書には出てきませんが、時々用いられます。このサイトでも、カッコ書きで登場することがあります。