化学魔の還元

脂肪族編1-4.アルコールに共通する反応

アルコールの反応性は第一級・第二級・第三級で異なりますが、そのどれにも共通する反応を書いていきます。
1.アルカリ金属との反応
2.ハロゲン化水素との反応
3.脱水反応
反応は共通して起きますが、反応のしやすさは変わってきます。

1.アルカリ金属との反応

アルコールにナトリウムなどの陽性の強い金属を加えると、ヒドロキシル基OHのHがNaに置換され、H2が発生してナトリウムアルコキシドが生成されます。

2C25OH+2Na→   2C25ONa   +H2
         ナトリウムアルコキシド

この反応は、ヒドロキシル基の検出に用いられます。
<ナトリウムアルコキシド>一般式R-ONa
アルコールのヒドロキシル基のHが、Naになった化合物を指します。
命名法は、アルキル基Rの語尾「ィル」を「ォキシド」に換えて、その前にナトリウムをつけます。
英語表記だと「yl」を「oxid」に換えていることになります。
例.

エタノール⇒ナトリウムエトキシド   プロパノール⇒ナトリウムプロポキシド
ethanol⇒sodiumethoxid           propanol⇒sodiumpropoxid
25OH⇒CH3CH2ONa      C37OH⇒C37ONa

この反応は、第一級で最も反応性が高く、第二級、第三級の順に反応性が弱まります。

ナトリウムアルコキシドは、水に溶けると加水分解して強塩基性を示します。

25ONa+H2O→C25OH+NaOH

またナトリウムの代わりにカリウムを用いても同様に反応し、カリウムアルコキシドが生成されます。

2.ハロゲン化水素との反応

アルコールに濃塩酸などの濃ハロゲン化水素酸を加えると、ヒドロキシル基がハロゲンで置換されます。

25OH+HCl→  C25Cl  +H2
        1−クロロエタン

この反応は第三級アルコールの反応性がとても高く、大きく遅れて第二級、第一級の順に反応性が弱まります。
例に挙げた反応は(筆者はまだ試していないので保証は出来ませんが)たぶん、かなり起こりにくいと思われます(笑)単に書きやすくて教えやすいから教科書に載ってるんでしょうね。
この反応性の差を用いて、アルコールが第何級なのかを調べることが出来ます。
濃硫酸に触媒としてZnClを溶かした試薬をルーカス試薬といいます。アルコールにルーカス試薬を加えると、

第一級アルコール:常温では反応せず加熱が必要なため、反応しない。
第二級アルコール:反応開始までに数分ほどの時間を要する。
第三級アルコール:数秒で白色沈殿を生じる。

という違いが生じます。この反応の様子からアルコールの識別が可能です。
これをルーカス試験といいます。

3.脱水反応

アルコールの脱水反応は、分子内脱水と分子間脱水の2種類が起こります。

分子内脱水:1分子内で水1分子が奪われる反応
分子間脱水:2分子間で水1分子が奪われる反応

A.分子内脱水

エタノールに濃硫酸を加え、160〜170℃に加熱すると、エチレンが生成します。

OH→CH=CH+HO (触媒:HSO

これは、エチレンの実験室的製法のところで一度見ましたね。
この反応を詳しく見てみると、次のようにヒドロキシル基と隣のHが奪われているのが分かります。


B.分子間脱水

エタノールに濃硫酸を加え、130〜140℃に加熱すると、ジエチルエーテル(後述)が生成します。

2COH→C-O-C+HO (触媒:HSO4)

この反応のように、2つの分子から簡単な分子が奪われて2分子が結合する反応を縮合といいます。
今度は、片方のエタノールの持つヒドロキシル基ともう片方の持つHが奪われていることが分かります。


アルコールの脱水反応では、第三級アルコールが一番脱水されやすく、第二級、第一級の順に脱水されにくくなります。
また、分子内脱水してアルキンが発生するか、分子間脱水してエーテルが生成するかは、反応温度によって決まります。ここでの反応のように、比較的高温度だとアルキン、比較的低温度だとエーテルが生成します