化学魔の還元

脂肪族編1-3.アルコールの性質


・水溶性
アルコールはアルキル基(炭化水素基)とヒドロキシル基が結合した構造をしていますが、アルキル基は疎水性、ヒドロキシル基は親水性を示すため、アルコールの水溶性はこれらの兼ね合いで決まります。
メタノール・エタノール・1-プロパノールなどのようにアルキル基が小さいアルコールは親水性のヒドロキシル基によって水によく溶けます。
特に炭素原子数が3個以下のアルコールは水と自由な割合で混ざることが出来ます。
逆に炭素数が増えてくると、アルキル基の疎水性が強まり、水に溶けにくくなります。

・沸点
沸点は炭素原子数・ヒドロキシル基の数で決まります。一般に第一級>第二級>第三級の順で沸点が低くなり、枝分かれの無いほうが有るほうよりも高くなります。
また、構造異性体(細かく言うと官能基異性体)の関係にあるエーテル(後述)や同じくらいの分子量を持つ炭化水素基と比べてもかなり高い沸点を示します。

水酸化物イオンOHは、陽イオンとイオン結合するので、水酸化ナトリウムNaOHなどは塩基性を示します。
対して、アルコールの持つヒドロキシル基はCと共有結合しているので、水に溶かしても電離することはなく、アルコールは中性を示します。

・メタノール
メタノールはメチルアルコールとも呼ばれる、無色の液体です。有毒で、飲むと視神経が侵されて失明します。
工業的には、触媒にZnOなどを用いて、250〜300×105・300〜400℃という高温高圧下で、一酸化炭素と水素を反応させて合成されます。

CO+2H2→CH3OH   触媒:ZnO

メタノールは燃料や有機溶媒、工業用などに用いられます。

・エタノール エタノールC25OHはエチルアルコールとも呼ばれる、無色の液体です。単に物質名として「アルコール」という場合には、エタノールを指すことが多いです。
エタノールは酒類に含まれます。お酒をつくるときには、グルコース(ブドウ糖)を酵母菌などによって分解して生成します。

6126→2C25OH+2CO2↑ (酵素:チマーゼ)

これをアルコール発酵といいます。アルコール発酵には酵素チマーゼが働いて進行します。
また工業的には、リン酸を触媒に用いて、エチレンに高温の水蒸気を反応させてつくります。

CHCH2+H2O→CH3CH2OH (触媒:H3PO4

これは、エタノールを濃硫酸で脱水する反応の逆反応にあたります。
エタノールは、飲用にされたり、有機溶媒や工業などに使われます。

また、エタノールは飲める状態にあると高い酒税が掛けられます。ですから、エタノールを買ってきて燃料として使うことはあまりありません。(高いからです。)
また工業用エタノールは、ガソリンやメタノールなどの「工業的には混ぜても問題ないが、分離が容易でなく飲むと危険な物質」を混ぜることで免税されています。