化学魔の還元

酸化還元編a.酸化還元の基礎演習(解答編)

酸化数の問題

酸化数の問題 問1 解答
  1. x+(-2)×2=0 x=4  答.+W
  2. 2x+(-2)=0 x=1 答.+T
  3. x+1×3=0 x=-3 答.-V
  4. 1×2+x+(-2)×3=0 x=4 答.+W
  5. x+(-2)×4=-2 x=6 答.+Y
  6. x+(-2)×3=0 x=6 答.+Y
  7. 1×3+x+(-2)×4=0 x=5 答.+X
  8. x+(-2)=0 x=2 答.+U
  9. 2x+(-2)×3=0 x=3 答.+V
  10. これは水素化金属なので、Hの酸化数が-T,Naの酸化数が+T
  11. これは過酸化水素なので、Hの酸化数が+T,Oの酸化数が-T
  12. Naは「Na+」の状態なので酸化数+T。
    1×2+x+(-2)×3=0 x=4 答.+W
  13. 見慣れない物質ですがそのままやりましょう。
    x+1×4+(-2)=0 x=2 答.+U
  14. x+1×2+(-2)=0 x=0 答.0
  15. x+1×2+(-2)×2=0 x=-2 答.-U

問1の問題は問題編の「酸化数1」へ。

解説

すべて公式通りに解ける問題です。本編で書けなかったことも含めて解説します。

5.6.
硫黄の酸化数を訊いているのですが、同じ数字になりました。これはSO3とSO42-すなわちH2SO4との関係を表しています。実は硫酸というのは、原理的には三酸化硫黄と水をくっつけて製造されてるんです。良く見ると、SO3+H2O→H2SO4となっていますね。この関係は二酸化炭素と炭酸、二酸化窒素と硝酸などにも言えます。確かめてみてください。

4.12.
この2つも同じ炭素についての出題です。4の方は炭酸ですが、12の方は炭酸が水酸化ナトリウムと酸塩基反応をしてできた塩ですね。これも同じ数字になっているのですが、この問題には酸塩基反応では決して酸化数は変化しないという重要な事実が含まれています。理由は単純に、酸塩基反応では電子のやり取りをしないからです。逆に言うと、酸化数の変化を伴うものはすべて酸化還元反応です。
どちらも、反応の原理を考えてみれば分かると思います。ですが、このことは受験の上では重要ですね。センターレベルでは「この4つの式の中で酸化還元反応を選べ」とか「この中で下線の付いた原子の酸化数が変化しているものを選べ」とかいう問題がよく出ます。6割狙いの人はこの手の問題を確実に取らなければなりませんし、8割以上欲しい人がこの問題にかけられる時間は30秒だけです。典型問題に対しては、こういう細かい「定理」を少しずつ覚えて使うことで確実に点数が伸びていきます。

10.11.
これは本編の第3章で「例外」として取り上げたものですね。それぞれ解説していきます。
水素化ナトリウムは、見たまんま水素とナトリウムのイオン結晶です。問題はその電気陰性度で、水素は確かに非金属の中では最も小さいのですが、金属の電気陰性度はさらに小さいのでナトリウムが電子を放出して水素が受け取っています。いつもは電子を取られる水素ですが、今回は受け取る役なので酸化数は-Tとなっています。
過酸化水素は、構造式を見るとH-O-O-Hという形をしています。酸素同士では電子の取り合いをしないので、結局1つしか電子を奪うことができません。なので酸化数は-Tです。水素の方はいつも通りですね。

13.14.15.
有機反応ではよく出る物質で、上からメタノール・ホルムアルデヒド・ギ酸という名前です。酸化数が2ずつ増えていることに注目しましょう。実はメタノールを酸化するとホルムアルデヒドに、さらに酸化するとギ酸になる、という関係なんですね。これは有機化学ではよく出る反応です。
あと、ホルムアルデヒドの酸化数は0です。2つとられて2つ奪うので差し引き0という計算ですね。このことはあとの問題で触れようと思います。

酸化還元反応の問題 問1 解答
  1. 酸化剤:酸素 還元剤:水素 (火花放電)

    O2 + 2H2 → 2H2O
  2. 酸化剤:過マンガン酸カリウム(硫酸酸性) 還元剤:硫化水素
    2KMnO4 + 5H2S +3H2SO4 → 2MnSO4 + 5S + 8H2O
  3. 酸化剤:希硝酸 還元剤:シュウ酸
    2HNO3 + 3(COOH)2 → 2NO + 5CO2 + 4H2O
  4. 酸化剤:二クロム酸カリウム(硫酸酸性) 還元剤:二酸化硫黄
  5. K2Cr2O7 + 3SO2 + H2SO4 + 6H2O → Cr2(SO4)3 + K2SO4
  6. 酸化剤:二酸化硫黄 還元剤:硫化水素
    SO2 + 2H2S → 3S + 2H2O
  7. 酸化剤:希塩酸 還元剤:鉄
    2HCl + Fe → FeCl2 + H2
  8. 酸化剤:希硝酸 還元剤:銅
    3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O
  9. 酸化剤:濃硝酸 還元剤:銀
    Ag + 2HNO3 → AgNO3 + NO2 + H2O
  10. 酸化剤:熱濃硫酸 還元剤:鉄
    Fe + 2H2SO4 → FeSO4 + SO2 + 2H2O
  11. 酸化剤:過マンガン酸カリウム 還元剤:チオ硫酸ナトリウム
    2KMnO4 + 6Na2S2O3 + 4H2O → 2MnO2 + 3Na2S4O6 + 6NaOH + 2KOH

問1の問題は問題編の「酸化還元反応1」へ。

解説

先に各反応式の解説から。そのあとで特に注意したい事項を説明します。

1.解説は要らないでしょう。言うまでもなくこれも酸化還元反応です。

2.公式通りの問題です。硫酸酸性なので、酸の出所は硫酸です。
酸化剤:MnO4- + 5e- + 8H+ → Mn2+ 4H2O …×2
還元剤:H2S → S + 2H+ + 2e- …×5
イオン反応式:2MnO4- + 5H2S + 6H+ → 2Mn2+ + 5S + 8H2O
化学反応式:2KMnO4 + 5H2S +3H2SO4 → 2MnSO4 + 5S + 8H2O

3.これも公式通りの解き方でいけますね。式中の酸は硝酸が自分で出したものです。
酸化剤:NO3- + 3e- + 4H+ → NO + 2H2O …×2
還元剤:(COOH)2 → CO2 + 2H+ + 2e- …×3
イオン反応式:2NO3- + 3(COOH)2 + 2H+ → 2NO + 3CO2 + 4H2O
化学反応式:2HNO3 + 3(COOH)2 → 2NO + 3CO2 + 4H2O

4.(硫酸酸性)とあるので、式中の酸の放出源は希硫酸です。あとカリウムイオンをお忘れなく。
酸化剤:Cr2O72- + 6e- + 14H+ → 2Cr3+ + 7H2O …×1
還元剤:SO2 + 2H2O→ SO42- + 4H+ + 2e- …×3
イオン反応式:Cr2O72- + 3SO2 + 2H+ + 6H2O → 2Cr3+ + 3SO42-
化学反応式:K2Cr2O7 + 3SO2 + H2SO4 + 6H2O → Cr2(SO4)3 + K2SO4

5.試験ではなぜかよく見かけます。式を覚えてもいいレベルかもしれません。
酸化剤:SO2 + 4H+ + 4e- → S +2H2O …×1
還元剤:H2S → S + 2H+ + e- …×2
化学反応式:SO2 + 2H2S → 3S + 2H2O

6.これって酸塩基反応?と思われがちですが、「酸が金属と反応して水素を出す」反応自体は酸化還元反応です。
酸化剤:2H+ + 2e- → H2
還元剤:Fe → Fe2+ + 2e-
イオン反応式:2H+ + Fe → Fe2+ + H2
化学反応式:2HCl + Fe → FeCl2 + H2

7.銅は6と同じようにはいきません。なぜなら、イオン化傾向が水素より小さいからです。
酸化剤:NO3- + 4H+ +3e- → NO + 2H2O …×2
還元剤:Cu → Cu2+ + 2e- …×3
イオン反応式:3Cu + 2NO3- + 8H+ → 3Cu2+ + 2NO + 4H2O
化学反応式:3Cu + 8HNO3 → 3Cu(NO3)2 + 2NO + 4H2O

8.これまたイオン化傾向の小さい金属。7と同様、硝酸の酸化力で溶かします。
酸化剤:NO3- + 2H+ +e- → NO2 + H2O …×1
還元剤:Ag → Ag+ + e- …×1
イオン反応式:Ag + NO3- + 2H+ → Ag+ + NO2 + H2O
化学反応式:Ag + 2HNO3 → AgNO3 + NO2 + H2O

9.濃硫酸はほとんど電離しないので、酸の酸化力ではなくあくまでも熱濃硫酸の酸化力で溶かします。
酸化剤:SO42- + 4H+ + 2e- → SO2 + 2H2O …×1
還元剤:Fe → Fe2+ + 2e- …×1
イオン反応式:Fe + SO42- + 4H+ → Fe2++ SO2 + 2H2O
化学反応式:Fe + 2H2SO4 → FeSO4 + SO2 + 2H2O

10.硫酸酸性ではありません
酸化剤:MnO4- + 2H2O + 3e- → MnO2 + 4OH- …×2
還元剤:2S2O32- →  S4O62- + 2e- …×3
イオン反応式:2MnO4- + 6S2O32- + 4H2O → 2MnO2 + 3S4O62- + 8OH-
化学反応式:2KMnO4 + 6Na2S2O3 + 4H2O → 2MnO2 + 3Na2S4O6 + 6NaOH + 2KOH