化学魔の還元

熱化学編7.原子レベルの反応熱

ここからは化学Uの範囲になります。化学Tでは分子レベルの熱化学を扱っていましたが、化学Uの熱化学では原子レベルの話を扱っていくことになります。
しかし特に難しくなるわけではありません。覚えることが多少増えるだけで済みます。


まずは原子レベルの反応熱について、特に名前がついているものを紹介していきます。

1.結合エネルギー

気体分子内のある共有結合1molを切断するときに必要なエネルギーを結合エネルギーといいます
例:H−H結合の結合エネルギーは432kJ/molである。

2(気)=2H(気)-432kJ


分子状態より原子状態のほうが不安定なので、切断の時は吸熱、結合のときは発熱となります。
ほかの共有結合についても結合エネルギーを示しておきます。(覚える必要はありません)

H−H:432kJ/mol
C−C:331kJ/mol
C=C:590kJ/mol
C≡C:810kJ/mol
C−H:413kJ/mol
O−H:463kJ/mol
N−H:390kJ/mol
C=O:804kJ/mol

結合エネルギーが大きいほど、切断に必要なエネルギーが大きいことになるので、安定な結合であることが分かります。


2.解離エネルギー

気体分子1molに含まれる共有結合をすべて切断するのに必要なエネルギーを解離エネルギーといいます
例:メタンをバラバラの原子状態にするのに1651kJ/molのエネルギーが必要である。

CH4(気)=C(気)+4H(気)+1651kJ


メタン1分子にはC−H結合が4つ含まれているので、メタン1molを解離するということはC−H結合4molを切断することと同じです。結合4molといってもmolは単に個数を表しているだけなので、「C−H結合2.4×1024本を切断」ということです。
ということは1本あたりの切断に必要なエネルギーはこの1651kJを4で割ればいいですね。こうして、上表の413kJが算出されます。


3.昇華熱

固体状態の物質1molを気体状態にするのに必要なエネルギーを昇華エネルギーといいます
例:黒鉛1molを気体状態にするのに kJ/molのエネルギーが必要である。

C(固)=C(気)−  kJ

ここで物質の状態について復習しておきましょう。
物質の状態は物質の集合状態を表しています。




物質の状態

物質の状態とは、物質の集合状態を表す。


固体:粒子は互いの引力によって束縛され、一定の位置に固定されている。 
液体:熱運動が激しくなり、ある程度の流動性をもつ。
気体:熱運動がさらに激しくなり、粒子間引力に打ち勝って自由に運動する。





4.格子エネルギー

1molのイオン結晶を気体状のイオンにするのに必要なエネルギーを格子エネルギーといいます
例:1molの塩化ナトリウムを気体状のナトリウムイオンと塩化物イオンにするのに771kJ/molのエネルギーが必要である。

NaCl(固)=Na(気)+Cl(気)−771kJ


先ほどの昇華熱とは違って気体状イオンに開裂させます。




5.イオン化エネルギー

1molの原子を陽イオンにするのに必要なエネルギーをイオン化エネルギーといいます
例1:1molのナトリウム原子をナトリウムイオンにするのに496kJ/molのエネルギーが必要である。

Na(気)=Na(気)−496kJ

例2:1molのマグネシウム原子をマグネシウムイオンにするのに2189kJ/molのエネルギーが必要である。

Mg(気)=Mg2+(気)−2189kJ


イオン化エネルギーは、陽子と電子の引力に逆らって電子を奪うので吸熱となります。


6.電子親和力

1molの原子を陰イオンにする際に放出されるエネルギーを電子親和力といいます
例:1molの塩素原子を塩化物イオンにするとき   kJ/molのエネルギーが放出される。

Cl(気)=Cl(気)+ kJ

電子親和力は、陽子と電子の引力がした仕事が熱となるので、発熱となります。