ではこれから「グルコースC6H1206の生成熱を求めよ」という1つの問題に対して、いくつかの解法を示しながら解いていこうと思います。
問題
グルコースC6H1206の燃焼熱を求めよ。ただし、水素の燃焼熱は286kJ/mol、黒鉛の燃焼熱は394kJ/mol、グルコースの生成熱は1260kJ/molとする。
グルコースC6H1206の燃焼熱を求めよ。ただし、水素の燃焼熱は286kJ/mol、黒鉛の燃焼熱は394kJ/mol、グルコースの生成熱は1260kJ/molとする。
典型中の典型問題です。定期考査なら30点分くらいの要素が詰まってますね。
まずどのような解法においても条件整理を先に行います。
グルコースの燃焼熱をQkJ/molとおくと、
C6H1206(固)+6O2(気)=6CO2(気)+6H2O(液)+QkJ・・・A
H2(気)+1/2O2(気)=H2O(液)+286kJ・・・B
C(黒鉛)+O2(気)=CO2(気)+394kJ…C
6C(黒鉛)+6H2(気)+302(気)=C6H1206(固)+1260kJ・・・D
このようにして示された反応熱を具体的な熱化学方程式の形に直しておきます。H2(気)+1/2O2(気)=H2O(液)+286kJ・・・B
C(黒鉛)+O2(気)=CO2(気)+394kJ…C
6C(黒鉛)+6H2(気)+302(気)=C6H1206(固)+1260kJ・・・D
最初は連立方程式の要領で解く方法を2つ解説していきます。
1.加減法
組立法とも呼ばれる方法です。これは与えられた反応式B C Dが、求める反応の式Aになるように操作して解く方法で、次の手順によって行います。@ 式B,C,Dを見て、1回しか登場していない物質を見つける
(2回以上登場しているものは、気にしなくても何とかなります。)
式Aはちょっと置いといて、B,C,Dを眺めてみましょう。一度しか登場していない物質があるはずです。ここでは式Bの右辺にあるH20(液)、式Cの右辺にあるCO2(気)、C6H1206(固)ですね。
A 式Aを見て、@で見つけた物質の係数をチェックする
H20(液)は右辺にあって係数6、CO2(気)は右辺にあって係数6、C6H1206(固)は左辺にあって係数は1です。
B Aの係数に合うように、式ごとに定数倍する
次のようになります。
6H2(気)+3O2(気)=6H2O(液)+286kJ×6kJ…B×6
6C(黒鉛)+602(気)=6CO2(気)+394×6kJ…Cx6
6C(黒鉛)+6H2(気)+3O2(気)=C6H1206(固)+1260kJ…D
次のようになります。
+)6H2(気)+3O2(気)=6H2O(液)+286kJ×6kJ…B×6
+)6C(黒鉛)+602(気)=6CO2(気)+394×6kJ…Cx6
−)6C(黒鉛)+6H2(気)+3O2(気)=C6H1206(固)+1260kJ…D
6O2(気)=6H2O(液)+6CO2(気)−C6H1206(固)+(286×6+394×6−1260)kJ
D 反応熱を計算し、マイナスの物質は移項する。ここで式Aと同じになったかどうか確認する。
C6H1206(固)+6O2(気)=6CO2(気)+6H2O(液)+2820kJ
よって求める燃焼熱は、2820kJ/mol
2.代入法
これは、求める反応熱AにB、C、D、を代入して消去する方法です。加減法よりも機械的な作業ができます。では見ていきましょう。@ 式Aに含まれる”化合物”をチェックする。
6O2は無視です。他の3つは化合物ですね。
A @でチェックした化合物を式B、C、Dでから見つけて対応させる。
C6H1206はDにありますね。H20はBとD、CO2はCとDにありますが、簡単な式を選びましょう。すると、
B:H20 C:CO2 D:C6H1206
と対応できます。B Aで対応させた化合物だけが左辺にくるように式変形
次のようになります。
B:H2O(液)=H2(気)+1/2O2(気)−286kJ
CO2(気)=C(黒鉛)+O2(気)−394kJ
C6H1206(固)=6C(黒鉛)+6H2(気)+302(気)−1260kJ・・・D
CAに代入
これだけの作業で答えがでます。
{6C(黒鉛)+6H2(気)+3O2(気)-1260}+O2=6{C(黒鉛)+O2(気)-394}+6{H2(気)+1/2O2(気)-286}+Q
展開して整理すると、数字だけが残ります。-1260=(-394×6)+(-286×6)+Q ∴Q=2820kJ
よって、グルコースの燃焼熱は、2820kJ/molである。