化学魔の還元

熱化学編3.反応熱の種類

反応熱の種類やその形式によって、特殊な名前で呼ばれるものが多くあります。

1.燃焼熱

1molの物質が完全燃焼したときに出る熱を燃焼熱といいます
例:エタノールを完全燃焼すると、1368kJ/molの燃焼熱が出る。

C2H50H(液)+302(気)=2CO2(気)+3H2O(液)+1368kJ
完全燃焼では、CはCO2、HはH2O、SはSO2になる場合を指します。次のようにCOが生成する時は不完全燃焼といい、その時に出る熱は燃焼熱とは言いません。
C(黒鉛)+1/202(気)=CO(気)+111kJ
燃焼熱は必ず発熱反応となります。

2.生成熱

化合物1molがその成分元素単体から生成される時の反応熱を生成熱と言います
例:アンモニアNH3の生成熱は46.1kJ/molの発熱である。

1/2N2(気)+3/2H2(気)=NH3(気)+46.1kJ/mol

エチレンC2H4の生成熱は52.2kJ/molの吸熱である。
2C(黒鉛)+H2(気)=C2H4(気)−52.2kJ

3.溶解熱

1molの可溶性物質を多量の溶媒に溶かした時の反応熱を溶解熱と言います
例:固体の水酸化ナトリウムを水に溶かすと、44.5kJ/molの熱を発する。

NaOH(固)+aq=NaOHaq+45.5kJ

このaq"アクア"と読み、多量の水を表します。ここでH20(液)と書いてしまうと、NaOH 1molとH2O 1molの反応になってしまい、溶解熱の定義には合いません。
また、NaOHaqのように化学式の後ろについて、薄い水溶液であることを表します。これも、NaOH(液)と書いてしまうと、水酸化ナトリウムの融解液を表してしまいます。

4.中和熱

酸と塩基の水溶液中和して、H20 1molが生成される時の反応熱を中和熱と言います
例:塩酸と水酸化ナトリウムとの中和熱は56.5kJ/molである。

Hclaq+NaOHaq=NaClaq+H20+56.6kJ

強酸と強塩基との中和熱はほとんど一定の値を示します。またこれは水溶液同士の反応ですから、塩酸に固体の水酸化ナトリウムを入れた時には、溶解熱と中和熱の両方が発生します。

5.蒸発熱/融解熱/昇華熱

1molの物質が蒸発する時に出入りする熱を蒸発熱と言います
同様に、融解する時には融解熱昇華するときは昇華熱と言います
例:水の蒸発熱は44kJ/mol、融解熱は6.0kJ/mol

H20(液)=H20(気)+44kJ
H20(固)=H20(液)+6.0kJ