化学魔の還元

ハイレベル有機反応編5.オゾン層の破壊

オゾン層とは、高度20〜40Kmの、オゾン濃度がピークになっている層のことです。このあたりでは最大で、空気分子100万個に1個がオゾンO3になっています。
まずはオゾンの成り立ちから見ていきます。

酸素分子が紫外線(0.24μm以下の波長領域)を吸収して、2つのO原子に分解します。これを光解離(photodissociation)といいます。

2→2O  (紫外線0.24μm以下)

このO原子は不対電子を持ったラジカルですが、触媒Mが存在すれば、酸素分子O2と結合して オゾンO3となります。

O+O2→O3  (触媒M)

実際の反応では、N2やO2などが触媒としてはたらいているようです。

そしてオゾンO3は不安定なため、紫外線(今度は0.32μm以下)を吸収すると簡単に解離して酸素原子Oと酸素分子O2が生成します。

3→O+O2  (紫外線0.32μm以下)

そして酸素ラジカルが別のオゾンにぶつかって安定な酸素に戻るとされています。

O+O3→2O2

このようなオゾン生成消滅の化学反応をチャップマン反応といい、1930年に発表されました。

この理論にしたがってオゾン量の高度分布を計算し、実測値と比較しました。だいたいの傾向は一致したものの、高度20Kmより上の観測地が、理論値よりもずっと少なかったのです。つまり、オゾンの破壊が紫外線によるものだけではないということを示しています。

現在ではその破壊サイクルにフロンが有効であるとされています。

フロンは、正式にはクロロフルオロカーボンと呼ばれ、炭化水素のHをClやFで置換した化合物の総称で、化学的に非常に安定、人体にも無害なため、電子部品の洗浄・冷蔵庫の冷媒・スプレーの噴射剤などに多量に用いられてきました。
フロン−12CCl2F2、フロン−11CCl3Fなどが代表的で、約10年かけて成層圏に達します。

成層圏に達したフロンは、強い紫外線を受けると分解し、塩素ラジカルを生成します。これが連鎖開始反応にあたります。

CCl2F2→CClF2・+・Cl


塩素ラジカルは非常に不安定で、成層圏のオゾンをどんどん破壊していきます。

Cl・+O3→ClO・→O2


しかしこの時、成層圏には酸素分子が解離した酸素ラジカルも存在するので、次の反応によって塩素ラジカルが再生します。

ClO・+・O→Cl・+O2


このように、オゾンを分解しながら再生するので、1個の塩素ラジカルは数万個のオゾンを破壊してしまいます。