化学魔の還元

物質量編4.気体1molの体積

酸素や水素などの気体は、重さよりも体積で測った方が便利です。

アボガドロの分子説

1811年、イタリアのアボガドロは、次のような分子説を提唱しました。

アボガドロの分子説
  1. それぞれの気体は、何個かの原子が結合した分子という粒子からなる。
  2. 同温・同圧のとき、同数の分子を含む気体は、どんな種類の気体であっても、同じ体積を占める。

当時の化学界では、「異種の原子のみが複合原子をつくり、同種の原子同士では結合力がはたらかない」という考え方だったので、新たに同種原子間での結合力を説明する必要がありました。しかし、その結合力が証明できず、実験的検証もされていなかったため、当時の化学者たちには全く受け入れられませんでした。

これが認められたのは、1860年の第1回国際化学会議です。このときすでに彼の死から4年が過ぎていました。

気体1molの体積(モル体積)

現在、アボガドロの分子説のうちで(U)の方を特にアボガドロの法則といいます。

この法則は、同温・同圧・同体積の二種類の気体があれば、その気体の種類がどんなものであれ、中に入っている分子の数は必ず一緒になるというふうに言い換えることができるので、これを使って分子の数を数えることができます。

気体1molの体積

0℃、1.013×105Paのとき、1molの気体の体積は22.4L

世界中で「0℃、1.013×105Paで気体の体積を測ろう」という風に取り決めをしておくわけですね。この0℃、1.013×105Pa(1気圧や1atmとも書かれることがある)という状態を気体の標準状態といいます。

気体1molが22.4Lという関係は覚えてください。ちなみに22.4Lというのは、一辺が28.2cmの立方体の体積とほぼ同じ体積です。

モル体積の応用

前の章で「水が180グラム欲しいとしましょう。さて、水素と酸素をそれぞれ何グラムずつ混ぜればいいでしょうか?」という問題を、モルを使って解きました。モルを扱う問題ではこういうのがたくさん出てきます。ですが、僕がはじめてこの問題を見た時は「気体の質量とかどうやって量るんだよ!!」とツッコミをいれた覚えがあります。

量る方法もたぶんあるんだと思いますが、どう見ても面倒です。今回学習した「モル体積」を使えば一発ですね!どんな気体でも22.4Lで1molなのですから。

では、問題を「水素と酸素をそれぞれ何リットルずつ混ぜればいいでしょうか」という問題に書き換えて解いてみましょう。水180グラムは10molです。反応式から、水素を10mol、酸素を5mol混ぜればよいということですね。

さて、どんな気体でも22.4Lで1molなのですから、それぞれ必要な体積は

水素:22.4×10=224〔L〕 酸素:22.4×5=112〔L〕

が、答えになります。気体はやはり体積で扱うのが便利ですよね。

混合気体の平均分子量

混合気体であっても標準状態で22.4L/molという関係は成り立ちます。どんな気体でも同じなのですから、混ぜても同じですね。混合気体1molの質量も、成分気体の組成から分かります。

例えば、地球の大気は窒素80%、酸素20%の混合気体であるとすれば、N2=28.0、O2=32.0として、

28.0×0.80 + 32.0×0.20=28.8

となります。これが空気の平均分子量になります。ある気体が空気より軽いか重いかの基準としてよく使われますね。