化学魔の還元

物質量編3.物質量

原子量や分子量をうまく使って、重さと粒子数を結びつけます。

モル導入の前準備

モルとは何かを考えるために、思考実験をしようと思います。

ここに、原子1個の重さを測ることのできる質量計があったとします。12C原子を質量計に乗せてみたところ、aグラムと出ました。次に24Mg=24の質量を測ってみようと思います。ですが、質量計に乗せるまでもなく結果は分かっています。2aグラムと出るはずですね。原子量が12C原子の倍なのですから。実際に質量計に乗せてみると、2aグラムと出ました。

12C原子の質量はaグラム、24Mg原子の質量は2aグラムと出た。

もう1個ずつ乗せてみます。12C原子2個の質量は2aグラム ,24Mg原子2個の質量は4aグラムです。

12C2個の質量は2aグラム ,24Mg2個の質量は4aグラムになった。

一気に飛んで、10000個ずつ乗せてみましょう。12C原子10000個の質量は10000aグラム ,24Mg10000個の質量は20000aグラムになります。

両方とも一万個ずつ乗せた時も、質量の比は変わらない。

ここで注意したいのは、同じ個数を乗せている時には質量比が1:2で変わっていないということです。さらにこの比は原子量の比に等しい値になります。

質量比から粒子数の比がわかる

思考実験を続けます。今度は逆に12Cが10000aグラムあったとします。同じ粒子数の24Mgは何gでしょうか?20000a(g)ですよね。質量比が原子量比12C:24Mg=1:2である限りは、粒子数も同じはずです。

そしたらもうaなんて要りません。12Cが1.0gあったら、それと同じ粒子数の24Mgは2.0gです。粒子数が何個かはわかんないけど、12C 1.0gと24Mg 2.0gは、同じ粒子数であるはずです。

質量比が原子量の比であれば何グラムだろうと個数は同じ

もう図は書きませんが、12Cと24Mgだけでなくでもこれはこの性質は使えます。たとえば14Nと16Oなら、Nが7gでOが8gの時、何個あるかはわからなくてもきっかり同じ数だけあるということは云えます。

さらに原子だけでなく、分子にもこの考え方を適用することがきます。C=12、O2=32とします。Cが3g、O2が8gあるとき、このC原子の数とO2分子の数はきっかり同じになります。

この事実は非常に有用です。なんといっても、何個かを数えなくても、きっかり同じ数だけあるということは保証されたわけですから!

モルの定義

この考え方をうまく使って、粒子と質量との関係を定義したのがモルという単位です。

モル〔mol〕
ある物質1molとは、その物質の粒子数が、12グラム集まった12C原子と同じ数であることをいう
モル質量〔g/mol〕
ある物質のモル質量とは、その物質が1mol集まったときの質量をいう
原子量・分子量・式量の値に〔g/mol〕を付けるだけでよい

この定義は非常にうまくできています。1molの16Oとは何グラムでしょうか?さっきまでの議論を振り返ると、12Cと16Oの質量比が原子量の比に等しければ粒子数が同じなんでしたね。だから、16Oが16グラムあるとき、粒子数は12グラムの12Cと同じ、すなわち1molに相当します。

これは原子に限りません。水分子H2Oは18グラムで1molです。

要するに、どんな物質であっても、(原子量・分子量・式量)グラム集めれば、その中にある粒子の数は絶対に等しいということになります。それは何個かわからないけど、同じ数ということは保証されているから、それを1molと決めましょうということです。

molを使うと便利

いままでは、単に「AとBを混ぜるとCができます」というようなことだけを習って来たのだと思います。これからは「Cを何グラムつくりたいから、Aを何グラムBを何グラム混ぜればよい」ということまで操ることができます。

具体的に考えていきましょう。水素と酸素を混ぜて点火すると水ができる、という反応を考えてみましょう。

2H2 + O2 → 2H2

いま、この反応をつかって水が180グラム欲しいとしましょう。さて、水素と酸素をそれぞれ何グラムずつ混ぜればいいでしょうか?

まず、H2Oの分子量は18です。なので水は18グラムで1molです。水180グラムは、10molになります。

次に、反応に必要な水素および酸素は何molなのかを考えましょう。係数を見ると、水素:酸素:水=2:1:2となっています。ここでmolの出番です。水素2molと酸素1molを混ぜて火を付けると、過不足なく反応して水2molができるということはわかりますか?水素が酸素の2倍あればいいんですよね。

ということは、水10molを作るには、水素10molと酸素5molを混ぜて火を付ければいいということになります。やっと結論が出ます。H2=2、O2=32ですから、10molのH2は20グラム、5molのO2は160グラムです。これだけ混ぜて点火したら、予定通りの水が得られるはずです。molというのはこんな風にして使うんですね。

1molは何個か

ここで初めて「じゃあ1molって何個だろうな」という流れになるわけです。これは何とかして実測するほかありません。そして、測定した結果がすでにあります。

アボガドロ定数NA〔個/mol〕
アボガドロ定数とは、物質1molに含まれる粒子の数をいう
その値は6.02×1023〔個/mol〕

結局、1molというのは6.02×1023個のことだったというわけです。Cを6.02×1023個あつめたら12グラムになるわけです。この1molあたりの粒子数を表す定数を、分子説を提唱したアボガドロにちなんで、アボガドロ定数といい、記号NAで表します。

最初から6.02×1023ありきじゃありません。これは偶然の結果であって、質量数と粒子数の間に上手なリンクを作ったらこういう数になってしまうということです。定期考査とかでは、粒子数についてたくさん訊かれるかもしれませんが、後はもうすべてmolで考えられます。粒子数という面倒なものの代わりにmolですべてカタがつきます。