化学魔の還元

元素原子編3.同素体


同じ元素から成る単体なのに、その構造の違いによって異なる性質を示すものがあります。これを同素体といいます。
同素体をもつ元素は4つ「同素体はSCOP(スコップ)で探せ!」と覚えてください。

同素体の名称
硫黄S 斜方硫黄 単斜硫黄 ゴム状硫黄
炭素C 黒鉛 ダイヤモンド 無定形炭素 フラーレン
酸素O 酸素 オゾン
リンP 赤リン 黄リン

では一つずつ見ていきましょう。それぞれの違いを押さえてください。

1.硫黄


硫黄の同素体には斜方硫黄・単斜硫黄・ゴム状硫黄の3つがあります。
  1. 斜方硫黄
    • 形状
    • 常温常圧では一番安定していて、他の二つも常温放置しておくと勝手に斜方硫黄になります

  2. 単斜硫黄
    • 針状の黄色結晶
    • 常温でほっとくと勝手に斜方硫黄に戻る

  3. ゴム状硫黄
    • 無定形の黒褐色固体
    • 名前のとおりゴムのように弾性がある
    • 常温では不安定で、放っとくと勝手に斜方硫黄に戻る
実は実際に使われているゴムの中にも弾性を増すために硫黄が含まれているんですね。これについては高分子編(まだできてません汗)に詳しく書きたいです。
硫黄で重要な違いは、CS2(二硫化炭素)に対する溶解性の違いです。
  
CS2に対する溶解性
斜方硫黄 単斜硫黄 ゴム状硫黄
CS2に対する溶解性 ×

2.炭素


炭素の同素体には、黒鉛・ダイヤモンド・無定形炭素・フラーレンの4つがあります。この中で特に覚えてほしいのは黒鉛とダイヤモンドです。

  1. 黒鉛(グラファイト)
    • 黒灰色で軟らかい固体
    • 化学式は単にCと書かれる
    • 金属じゃないのに金属光沢を持つ(だから「鉛」と呼ばれたわけです。)
    • 平面層状構造
    • 共有結合の結晶としては例外的に電気伝導性がある

  2. ダイヤモンド
    • 無色透明の固体
    • 化学式は単にCと書かれる
    • 立体網目構造→世界一かたい物質
    • よく磨いたダイヤモンドは美しく輝く

  3. 無定形炭素
    • 黒色固体
    • 化学式は単にCと書かれる
    • 普段見るススやら燃えがらがこれ
    • スキマだらけ・穴だらけの構造(多孔質)

  4. フラーレン
    • 黒色固体
    • 60・C70・C80などの大きな球形分子の総称
フラーレンは形の美しさだけではなく、その特異な性質について研究が進んでいます。高等化学では詳しく扱うことはありませんので、興味のある方はwebページを参照してください。

3.酸素


酸素の同素体には酸素O2とオゾンO3の2つがあります。どちらも常温常圧では気体の分子です。

  1. 酸素
    • 無色無臭の気体で、空気中に約21%含まれる
    • 分子式O2
    • 酸化作用がある

  2. オゾン
    • 淡青色でニンニクのような特異臭の気体
    • 分子式O3
    • 不安定で、強い酸化力→漂白や殺菌に用いられる
    • 地球上空には、オゾン層というオゾンの密度が高い場所があり、紫外線などが地表に直接降り注ぐのを防いでいる
オゾン層の破壊の簡単な原理については当サイトオゾン層の破壊もご覧ください。

4.リン


リンの同素体には赤リンと黄リンの2つがあります。この2つは対照的な性質を示すので、比較しながら見ていってください。

  1. 赤リン
    • 暗赤色で粉末状
    • 黄リンに比べて安定
    • 二硫化炭素CS2に対して不溶
    • 毒性は少なく、自然発火しない

  2. 黄リン
    • 淡黄色でニラのような特異臭のあるロウ状固体
    • 二硫化炭素CS2に対して可溶
    • 空気中に置いておくと自然発火するので水中保存する
    • 極めて猛毒
黄リンは、古い文献では"白リン"と呼ばれていることもあります。図表を見ればわかりますが、ほとんど白色にちかいですからね。もちろん今は使いません。