化学魔の還元

質問回答0721.07年2月のQ&A1

Q1.無機の定性分析の覚え方をゼヒ教えていただきたいのですがよろしくお願いします!

A1.6属系統分析法は、「溶解性」「フロー」で覚えましょう!

<溶解性>


0.基本的に、強酸強塩基の塩は水に溶けやすい
1.1族イオンの塩、アンモニウム塩、硝酸塩、酢酸塩は、ほぼ例外なく水溶性
2.強酸塩(塩化物・硫酸塩)は基本的に水溶性ですが、例外的に次の塩化物・硫酸塩は沈殿

AgCl(白)…アンモニア水に溶ける
PbCl2(白)…熱湯や水酸化ナトリウム水溶液に溶ける
Hg2Cl2(白)

BaSO4(白)・CaSO4(白)・PbSO4(白)
これを「バカな硫酸溶けずに残る」と覚えます。

3.基本的に弱酸弱塩基の塩は水に溶けにくい
4.酢酸イオンの塩は水に溶ける
5.水酸化物・酸化物は、「1族、2族、アンモニウムイオン」になら溶ける
6.炭酸塩・リン酸塩は、「1族、アンモニウムイオン」になら溶ける
7.硫化物は少し複雑で、次のようになる

まずイオン化列のメンバーが足りないので、さらに詳しく
K.Ba.Sr.Ca.Na.Mg.Al.Mn.Zn.Cr.Fe.Cd.Co.Ni.Sn.Pb.H2.Cu.Hg.Ag.Pt.Au
覚え方は「カバーするかな曲がる万字 狂って角っこにすんなひどすぎ白金」
ここでMn〜Niは中性・塩基性の時のみ沈殿で、Sn以降はいつでも沈殿する

例外!
1、Cdはいつでも沈殿
2、Al(中性・塩基性)に硫化アンモニウム(NH4)2Sを加える ⇒ 水酸化物として沈殿


イオン性物質の溶解性について表にまとめました。

<フロー>



まず、この手順は暗記。部分的に問われることが多いので、前後の流れだけでも押さえましょう。

(もし試料が単体や化合物・沈殿物のままだったら、強酸化剤を加えてイオン化させる)
どんな金属でも、王水と共に加熱するとイオン化して溶解します。

1.希塩酸を加える。
この時「塩化物は不溶」の金属「Ag・Pb・Hg」が沈殿します。ここで沈殿した金属は第1属に分類します。

2.塩酸酸性のまま硫化水素を通じる
この時、イオン化列のSn以降とCdは沈殿します。ここで沈殿した金属は第2属に分類します。第1属に含まれる金属のうち、Hg2Cl2は少し水に溶けるので、この時にHgも沈殿します。

3.煮沸して酸化剤を加えてからアンモニア水を加える
この時Al・Fe・Crが水酸化物のかたちで沈殿します。ここで沈殿した金属は第3属に分類します。
酸化剤には希硝酸や過酸化水素がよく用いられます。
<酸化剤を加える理由>⇒2.ではH2Sが還元剤として働いて、Fe3+イオンがFe2+イオンになってしまいます。それをFe3+に戻すためです。
普通はそれで十分ですが、もう一歩踏み込んでみます。なぜFe3+にするのかというと、水酸化物の溶解度が違うからです。上の表を見てみると、Fe(OH)2は少々水に溶けますが、Fe(OH)3はほとんど溶けません。
沈殿せずに溶けたままだと取り出せないので、確実に沈殿させる必要があります。

4.塩基性のまま硫化水素を通じる
この時、イオン化列のMn以降は沈殿します。ここで沈殿した金属は第4属に分類します。

5.煮沸してから炭酸アンモニウムを加える
この時「アルカリ土類金属」、つまり「Ba・Ca・Sr(炭酸飲めないバカストロー)」が沈殿するので注意します。ここで沈殿した金属は第5属に分類します。

6.残った溶液
だいたいはアルカリ金属とMgが残ります。ここで沈殿した金属は第6属に分類します。

よく問われる物質についてまとめました。

<属内の分離・確認>



沈殿した金属が何なのかを確認します。また、同属内で二種類以上の金属イオンが沈殿した場合は、それらを分離します。

第1属.AgClとPbCl2とHg2Cl2

1.繰り返し沸騰水(もしくはNaOHaq)を注ぎ、溶液にクロム酸を加えて黄色沈殿が生じれば、Pbイオンの存在が確認されます。
Pb2++CrO42-→PbCrO4↓(黄色)
2.アンモニア水を注ぎ、黒変すれば、Hgイオンの存在が確認できます。
Hg22+→Hg2++Hg(黒色の微粒子)(不均化反応)
またこの時、Agイオンは次の反応によって錯イオンを作って溶解します。
Ag++2NH3→[Ag(NH3)2]+
3.2の液に希硝酸を加えて微酸性にし、白色沈殿が生じれば、Agイオンの存在が確認されます。
[Ag(NH3)2]+→Ag++2NH3
Ag++Cl→AgCl↓
(希硝酸によって錯イオンが分解し、溶液中のClイオンと結合して沈殿)

第2属.CuSとCdSとSnS(とHgSとPbS)

0.この時点で沈殿が黄色ならCdS、褐色ならSnS、と考えてもよいです。
1.希硝酸を加えて熱すと、S2-が酸化されて金属イオンが溶解します(が、HgSだけは溶解せずに残ります。)
2.希硫酸を加えて、白色沈殿があれば、Pbイオンの存在が確認されます。
3.残った溶液に過剰のNH3を加えて深青色に変われば、Cuイオンの存在が確認されます。

第3属.Al(OH)3とFe(OH)3とCr(OH)3

1.水酸化ナトリウム水溶液を加えて、赤褐色の沈殿が生じれば、Feイオンの存在が確認されます。
2.過酸化水素を加えて熱し、希塩酸とアンモニア水を加えて、白色沈殿が生じれば、Alイオンの存在が確認されます。
3.酢酸鉛(U)水溶液を加え、黄色沈殿が生じれば、CrO42-またはCr272-の存在が確認されます。

第4属.NiSとZnS(とCoSとMnS)

1.加熱してから希塩酸を加え、黒色沈殿が生じれば、Niイオンの存在が確認されます。
2.塩基性に変えてから2Sを加え、白色沈殿が生じれば、Znイオンの存在が確認されます。

第5属.CaSO4とSrSO4とBaSO4

1.希塩酸に溶かし、クロム酸水溶液を加えて、黄色沈殿が生じれば、Baイオンの存在が確認されます。
Ba2++CrO42-→BaCrO4(黄色)

2.溶液を凝縮した後、炎色反応で橙赤色ならCa2+、赤色ならSr2+イオンの存在が確認されます。

第6属.Na+とK+とMg2+

0.Mg2+は特殊な試薬で沈殿します。
1.溶液を凝縮した後、炎色反応で黄色ならNa+、赤紫色ならK+イオンの存在が確認されます。